おせちは新年のお祝いに欠かせない料理として、お正月の食卓で食べられています。毎年の慣習としておせちを用意しているものの、おせちの中身である定番料理の種類や込められた意味について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。今回はおせちを構成する5種類の料理と、縁起を担いだ食材の数々について解説します。地域による違いや重箱への詰め方など、おせちに関する豆知識も紹介します。お正月に向け、おせちについてあらためて理解を深めていきましょう。
お正月の定番となっているおせちとは、祝宴に供える食べ物「お節供(おせちく)」を起源とする料理です。元旦に一年の幸せを連れて訪れる年神様をもてなし、五穀豊穣や家族の健康を願う大切な意味合いがあります。
おせちの品数は一般的に20〜30種類にのぼりますが、構成は5種類に分けられます。ここでは、おせち料理の種類について紹介します。
祝宴で出される肴のことで、3つの料理からなることから「祝い肴三種」とも呼ばれます。東西によって品目は少し異なり、関東では「数の子」「黒豆」「田作り(ごまめ)」、関西では「数の子」「黒豆」「たたきごぼう」が一般的です。
「口取り」は、会席料理などで最初に出される料理のことです。いわゆる「酒の肴」を指し、かまぼこや栗きんとん、昆布巻き、伊達巻など、彩り華やかな品目が多く供されます。祝い肴三種も、広義では口取りの一種です。
日本料理で魚を焼いたものを指す言葉で、一汁三菜の一つです。おせちの焼き物には鯛や鰤、海老といった縁起の良い魚が詰められます。
いわゆる酢漬け料理のことで、大根と人参を飾り切りして水引に見立てた紅白なますや、菊花かぶ、チョロギ、紅白の酢れんこんなどが代表的です。箸休めとして、焼き物と同じ重に入れられることも多くなっています。
焼き物と並び、和食において欠かせない品目が煮物で、おせちでは「煮しめ」とも呼ばれます。おせちの煮しめには、れんこんやたけのこ、里芋など、縁起物とされる根菜類の煮物が詰められます。
おせちに使われるのは、数の子、黒豆、昆布、鯛など、いずれも縁起物とされる野菜や海の幸ばかりです。その一つひとつに大切な理由があります。
数の子はニシンの卵です。たくさんの卵が並んでいる様子は、子孫繁栄を意味します。また、ニシンには「二親」という字が当てられることもあり、両親の長寿を願うという意味合いもあります。
「まめ」という言葉は本来、「労苦をいとわず物事に集中して励む」「体が丈夫である」という意味があります。そこから転じて、マメ(豆)に、元気に働けるようにという意味が込められているのがおせちの黒豆です。また、薬膳では無病息災を願う長寿の食材として、古くから親しまれています。
関東で祝い肴に選ばれる料理です。カタクチイワシの幼魚を乾燥させて、砂糖・醤油・みりんで味付けした甘辛い風味が特徴となっています。田作りという名称は、一説によるとイワシが田んぼの肥料として使われていたことに由来すると言われています。そこから五穀豊穣を意味する料理として、おせちに選ばれているようです。別名のごまめは五万米という当て字をすることから「豊作祈願」、さらに幼魚を使用することから「子孫繁栄」の意味も持ちます。
関西で祝い肴に選ばれる料理です。ごぼうをたたいて開くことから「開運」を意味します。ごぼう自体も縁起の良い意味を持つ食材で、地中に力強く根を張ることから「延命長寿」、薬効に優れていることから「健康」などを願って食されてきました。また、関西では、豊作の年に飛んでくる黒い瑞鳥(ずいちょう)に姿形が似ていることから、豊作を祈願する象徴でもあります。
紅白かまぼこは、代表的なおせちの食材です。包丁で切り分けた形が半円になり「日の出」に見えると言われています。紅白の赤い部分は魔除け、白は清浄や神聖さを意味しています。
漢字で「養老昆布(よろこぶ)」と書くこともある昆布は、古くから戦勝祈願や不老長寿を祈願する食材として、祝事に用いられてきました。「子生婦(こんぶ)」や「子生夫」とも言われ、子孫繁栄を願う結納品としても贈られます。
長崎の料理「カステラかまぼこ」に由来する料理です。関東では甘め、関西では甘さ控えめな味付けがされることが多くなっています。伊達巻は巻物のような見た目をしていることから知性の象徴として扱われていて、おせちでは「学業成就」の願いを込めて食べられます。
栗は「勝ち栗」と呼ばれて、勝負事の際に縁起を担ぐために食べられていた食材です。また、金色の見た目から、金運を願って食べられることもあります。
人参と大根を千切りにして、酢と砂糖で味付けした料理です。おせちでは箸休めとしての役割も持ちます。紅白の色味が水引のようなおめでたい雰囲気を醸し出し、一家の安全を願う縁起物として食されます。
関東や東北の定番おせち料理で、渦を巻いたような形の植物の茎を使った酢の物です。真っ赤な色が特徴で、黒豆に添えられることも多くなっています。チョロギは「長老木」などと表記することから、長寿祈願を願って食べられる料理です。
関連記事:チョロギとはどんな食べ物?見た目や味の特徴、おせち料理との関わりなどを解説
代表的な出世魚のひとつです。地域によって呼び方は若干異なりますが、成長に応じて名前が変わることで有名です。立身出世を祈願するという意味があります。
紅白の色合いが美しい鯛は、「めでたい」の語呂合わせで知られる縁起物です。長生きする魚なので、長寿の象徴でもあります。
海老はひげが長く、背を丸めた姿は長寿を連想させるため、長生きを祈願するという意味合いがあります。おせちには、頭のある有頭海老を用いるのが一般的です。
山の幸を使った煮物で、具材は縁起の良い意味を持つものが選ばれています。たとえば里芋は「子孫繁栄」「家庭円満」、れんこんは「将来の見通しが良い」、手綱こんにゃくは「良縁成就」などの意味があります。煮しめとも似ていますが、鶏肉が入っているものが筑前煮、入っていないものが煮しめです。
おせちの定番料理や食べ方には地域差があります。ここでは特徴的な風習を持つ地域のおせちを紹介します。
その土地の名産や郷土料理をおせち料理として取り入れるケースもあります。
代表的な地域の定番おせち料理をまとめました。
・北海道:鮭の氷頭(ひず)をなますに入れた料理
・青森:いちご煮(アワビとウニのすまし汁)
・宮城:ナメタガレイ
・京都:白味噌雑煮、棒鱈
・大阪:にらみ鯛(鯛を用意して3日間手を付けないでおく)
・広島:賀日和え(穴子とほうれん草の和え物)
・愛媛:じゃこ天
・島根:サルボウ貝の煮付け
また、沖縄ではお正月におせち料理やお雑煮を食べる風習はありませんが「御三味(ウサンミ)」という重詰め料理を用意する習慣があるため、新年を祝して特別な食事をすることは共通しています。
北海道と東北では、12月31日の大晦日におせち料理を食べる家が多いと言われています。大晦日におせちを食べる場合、年越しそばやお雑煮はおせちの後に食べるのが一般的です。
また、北海道では新年に「トシトリ膳」というごちそうを食べる家庭もあります。トシトリ膳には刺身、旨煮、きんぴらごぼう、大根なます、黒豆、昆布巻き、数の子、茶碗蒸し、いずし、クジラ汁、口取り菓子など、土地の名産品とおせちにも共通する料理が含まれています。
おせち料理の中身の詰め方は、重箱の段数によって異なります。
おせち用の重箱には「三段重」もしくは「五段重」が選ばれ、食べる順番にあわせて上から順に詰められるのが一般的です。なお、「五の重」は神様から授かった福を詰めるため空にします。
三段重 | 五段重 | |
一の重 | 祝い肴・口取り | |
二の重 | 焼き物・酢の物 | 焼き物 |
三の重 | 煮物 | 煮物・酢の物 |
与の重 | ‐ |
おせちについての疑問・質問をまとめました。
おせちは漢字で「御節」と表記します。御節とは、おせちの由来である「御節供(おせちく)」が略された言葉です。
英語でおせちを伝える方法として、そのまま「Osechi-ryori」と表記する場合もあります。しかし、日本の食文化に詳しくない人に意味を伝わりやすくするために「New Year's dishes」や「New Year's food」、「Traditional New Year's food」と表現されることもあるようです。
喪中は故人を偲んで祝事を避ける時期ですので、縁起の良い料理を多く詰めたおせちは避けた方が無難です。
関連記事:喪中におせち料理を食べても大丈夫?喪中のおせちにおけるマナーやルールを解説
おせちにかかる費用は、手作りするか百貨店・ネットショップなどで購入するかによって変わってきますが、購入する場合は2〜3万円の価格帯が人気です。
参考:おせち・年末年始の過ごし方に関する意識調査2024/婦人画報のお取り寄せ
関連記事:おせち料理の相場はいくら?人数や段数、ジャンルごとの購入費用を紹介
おせちの予約が本格化するのは、9月頃からです。早期割引が適用されたり、すぐに販売予定数が売り切れてしまう人気のおせちが選べるため、早めの予約をおすすめします。ショップによっては9月前から早期割引が適用されるケースもあるようです。
百貨店やネットショップなどで予約したおせちは、基本的に冷凍便で届きます。元日に向けて食べる分だけ冷蔵庫に、長く楽しみたいものは冷凍庫に入れて保存しておくことで、好きなタイミングで食べられます。
今回はおせち料理の種類と食材について、詳しく解説しました。近年では、伝統を踏まえた上で和洋折衷や洋風、中華風など様々なおせちが誕生しています。祝い肴三種や縁起物とされる基本の食材を使用しながら、見た目にも華やかな新しいアレンジレシピを目にする機会も増えてきました。 元旦は美味しいおせちを囲みながら、家族の健康と安全、幸福を祈りましょう。
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