おせち料理の意味とは?
由来や定番料理も紹介

おせちの定番料理とは?おせちの意味や由来も紹介

おせちは、お正月の料理の定番です。しかし、おせちという言葉の意味や、具材1つずつに込められた意味を考えずに、習慣として毎年口にしている人も多いのではないでしょうか。
おせちの定番料理と言えば、黒豆や数の子、かまぼこなどを思い浮かべる方が多いと思いますが、伝統的なおせちには20〜30種類もの料理が詰められています。それぞれに縁起を担ぐための意味が込められています。新しい1年がより良い年になるよう祈るためにも、具材の意味を知って、家庭にあったおせちを選んでみてはいかがでしょうか。
今回は、おせちの定義や、各料理に込められた意味について解説します。

そもそもおせちの意味とは

おせち(御節)とは季節の節目を祝って食べる料理で、現代ではお正月を祝う食事をおせちと呼んでいます。
おせちにはさまざまな料理が詰められていて、選ばれる食材にはさまざまな縁起の良い意味が込められているのが特徴です。縁起の良い食材を食べることで、これから始まる1年間が素晴らしいものになるよう祈ります。
また、おせちは家を守る神様へのお供え物としての意味も持つ料理です。家を守る神様は「年神様」と呼ばれていて、同じくお正月の慣わしである鏡餅とともにお供えして、幸福を授けてもらいます。おせちが海の幸や山の幸が詰め込まれた豪華な内容になっているのも、神様への供え物であるためです。

お正月におせちを食べる意味

お正月におせちを食べる意味

お正月の代表的な料理と言えば、「おせち」。新年を迎えたタイミングでおせちを食べるのは、一体どのような意味があるのでしょうか。

おせちの名前の由来

おせちの由来は「お節供(おせちく)」「節会(せちえ)」という言葉です。その歴史は古く、稲作が全国に広まった弥生時代には、収穫に感謝して神様へお供え物をするという風習が生まれたと言われています。 古来、季節の変わり目などに祝い事をする日は「節日(せつにち、せちにち)」と呼ばれていました。奈良時代には、節日に宮廷内の行事として「節会(せちえ)」が始まり、祝宴で神様に供える食べ物のことを「お節供(おせちく)」と呼ぶようになりました。 「お節供」が民間に広まるようになったのは、節日が祝日として定められた江戸時代のこと。やがて江戸時代の終わりから明治時代にかけて、現在のような重箱に詰める形に定着したと言われています。 長い歴史の中で少しずつ現在の形に近づいてきたおせちですが、重箱に入った「おせち」が実際に庶民の間で定着したのは第二次世界大戦後であり、わりと最近です。 また、神道においては、神と人が共に飲食することを「神人共食(しんじんきょうしょく)」と言い、さまざまな祈りや願いを神様へ伝えるための大事な行為であるとされています。正月に家族で集まっておせちを食べるのは、こうした神事につながる行いでもあります(※諸説あります)。

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おせちに使う祝箸の意味

お正月のおせちにかぎらず、お祝いの席では祝箸が使われます。
祝箸は、一般的な割り箸と違って両端が同じ細さになっているのが特徴です。その理由は、自分では口をつけない方の端を神様が使って、共に食事するためです。この考えを「神人共食」と言います。
そのため、祝箸を取り箸として逆さにして使ったりするのは、マナー違反だとされています。

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重箱の段ごとの意味と定番料理

おせちを重箱に詰める場合、どの段にどの料理を詰めるか決まっています。五段重を用いる場合、段ごとに詰める料理と、料理に意味は次の通りです。

定番料理 意味
一の重 祝い肴・口取り 子孫?栄・無病息災など
二の重 焼き物 不老長寿・立身出世など
三の重 焼き物 家庭円満・子孫繁栄など
与の重 酢の物 魔除け・家内安全など
五の重 空箱 福を詰める

定番料理の詳細と、それぞれに込められた意味を紹介していきます。

【一の重】
子孫?栄・無病息災など

初の重、と呼ばれることもある一の重には、「祝い肴」と「口取り」を入れます。

祝い肴

祝い肴はおせちに最低限必要な3品で、「祝い肴三種」とも呼ばれます。肴という字が入っているように、お酒のおつまみとしての役割を持つ料理です。関東と関西で定番料理が異なり、関東は黒豆・数の子・田作りの3つ、関西は黒豆・数の子・たたきごぼうの3つを指します。

黒豆:無病息災

黒豆には「まめ(豆)に元気に働けるように」という意味が込められており、古くから無病息災を願う食材として知られています。また、黒は邪気を払う色であり、おせちの祝い肴三種に必ず入る料理のひとつです。

数の子:子孫繁栄

コリコリ、プチプチとした食感が魅力のニシンの卵である数の子は、たくさんの卵が並ぶ様子から、子孫繁栄を意味する縁起の良い食べ物です。二親(にしん)という漢字が当てられることもあり、両親の長寿を祝うという意味合いがあります。祝い肴三種のひとつで、おせちには欠かせない食材です。

田作り:五穀豊穣

カタクチイワシの幼魚を乾燥させ、醤油、みりん、砂糖などを使って甘辛く炒った料理です。その昔、小魚を田畑に肥料として撒いていたことから、五穀豊穣の願いを込めて「田作り」と呼ばれるようになりました。「ごまめ」と呼ばれる場合もありますが、漢字では「五万米」「五真米」といった字が当てられます。代表的な祝肴のひとつとして知られています。

たたきごぼう:子孫繁栄

ごぼうは地中深くまでしっかりと根を張る植物で、子孫繁栄の象徴とされています。また関西では、豊作の年に飛んでくる黒い瑞鳥(ずいちょう)に似ていることから、豊作を祈願するためにごほうが食べられるようになったそうです。やわらかく煮たごぼうをたたいて開くことで、開運を願うという意味もあります。

口取り

祝い肴とともにお酒のおつまみになる料理で、華やかな見た目のものが多いのが特徴です。祝い肴も口取りの一種ですが、呼び分ける場合には口取りは以下のような料理を指します。

かまぼこ:<紅>めでたさ・魔除け <白>神聖さ・清浄

彩りが美しい紅白かまぼこは、包丁で切り分けた形が半円に見えることから「日の出」を意味していると言われています。赤い部分は魔除け、白は清浄や神聖さを意味しており、新年の門出にふさわしい縁起物です。

伊達巻:学業成就

形が巻物に似ていることから「学業成就」の願いを表す伊達巻。食材として使われている卵は、子宝や子孫繁栄を意味するほか、殻の丸い形は家内安全に通じると言われます。華やかな金色の見た目は、黄金を連想させます。

栗きんとん:金運上昇

「きんとん」は金の団子や座布団という意味を持っており、金色の色彩が小判や黄金を連想させることから、商売繁盛、金運の象徴として考えられてきました。また、栗は「勝ち栗」とも言われ、戦の出陣や勝利を祝う際に食べられるなど、武士の縁起物としても有名です。

昆布巻き:不老長寿・子孫繁栄

「養老昆布(よろこぶ)」といった字を当てられることもある昆布は、不老長寿を願い戦勝を祈願する食材として親しまれてきました。また、江戸時代には「子生婦(こんぶ)」あるいは「子生夫」と呼ばれ、子孫繁栄を願って結納に用いられるようになったと言われています。

【二の重】
不老長寿・立身出世など

二の重には「焼き物」を入れます。

焼き物

焼き物とは、日本料理で魚を直火焼き(串焼き・網焼き)もしくは間接焼き(石焼き・杉焼き)した料理のことを指す言葉です。おせちでは鯛や鰤などの焼き魚や、海老・アワビといった海の幸も焼き物として入れられます。

鯛(タイ):首尾一貫・めでたい

「めでたい」の語呂合わせや紅白の色合いで知られるタイは、昔から祝事の縁起物として食べられています。七福神の恵比寿様が抱えていることでも有名です。

鰤(ブリ):立身出世

ブリは、代表的な出世魚の一種です。地域によって呼び名は異なりますが、成長するにしたがってその名が変わるため、立身出世を願って食べられる魚です。

海老(エビ):不老長寿・魔除け・立身出世

おせちでうま煮として料理されることが多い海老は、縁起の良い意味がたくさんあるため慶事でよく用いられます。たとえば、目が飛び出た見た目は「めでたし(目出たし)」、曲がった腰と長いひげが「長寿」、脱皮を繰り返すことから新たに生まれ変わる「立身出世」などの意味が見出されています。

アワビ:不老長寿

高級食材のアワビは、朝廷の祭事や神様への供え物として昔から贈答されてきたため、おめでたいイメージがある食材です。アワビの寿命は15?20年と長いことから、不老長寿を願って食べられることもあります。

【三の重】
家庭円満・子孫繁栄など

三の重には「煮物」を詰めるのが一般的です。

煮物

おせちの煮物で代表的なのは、「筑前煮」や「煮しめ」です。筑前煮と煮しめは、どちらもさまざまな具材を同じ鍋で煮た料理です。筑前煮は煮る前に食材を油で炒めること、さらに鶏肉を必ず入れることが煮しめとは異なります。 定番食材がにんじん、ごぼう、れんこん、こんにゃくなのは、筑前煮も煮しめも同じです。さまざまな食材を一緒に煮ることから家庭円満を願う意味があり、入れる食材は縁起の良いものが選ばれます。また、里芋やくわいも入れることもあります。

にんじん:運(ん)が付く・清廉潔白・節操

煮物の彩りとしての役割を担うにんじんは、梅の花をかたどった飾り切りを施されておせちに入れられるのが一般的です。梅はまだ寒い時期に咲くことから、清廉潔白・節操といった清楚なイメージを持つ花です。紅白の花を咲かせるため、お祝いの席に適しています。また、にんじんは名称に「ん」が付くことから、「運が付く」といった意味も込められている食材です。

ごぼう:延命長寿(健康)・家族が土地に根付いて安寧に暮らせますように

ごぼうは土の中に力強く根を張ることから、「延命長寿」「家族が土地に根付いて安寧に暮らせますように」などの意味を持ちます。また、調理工程でたたいて開くことから「開運」、薬効に優れている側面から「健康」のイメージも持つ縁起の良い食材です。

れんこん:将来の見通しが良い・子孫繁栄・運(ん)が付く

断面にたくさんの穴が空いていることから「未来を見通せる」「将来の見通しが良くなるように」という意味があります。また、れんこんには種が多いため、子孫繁栄を祈願する食べ物としても知られています。

こんにゃく:良縁成就

おせちの定番であるこんにゃくは「手綱こんにゃく」で、馬の手綱を模した結び目の形をしています。 農耕にとって大事な馬の手綱には、五穀豊穣を祈念する意味合いがあります。さらに「良縁」「円満」を想起させる結び目は「縁結び」もイメージさせる縁起の良い食材です。

里芋:子孫繁栄・家庭円満

親芋に子芋、子芋に孫芋、とつぎつぎ増えるため、子孫繁栄につながると言われるのが里芋です。おせちには亀の甲羅のように見える切り方の「六方むき」で調理されることが一般的です。

くわい:めでたい(芽出たい)・立身出世・不老長寿

丸い塊茎の先から大きな芽が出ることから「芽(め)出たい」に通じる野菜であると言われ、さらに子芋ができることから子孫繁栄を祈る意味合いもあります。

【与の重】
魔除け・家内安全など

4段目は「与の重」と呼ばれます。与の重には、「酢の物」が入れられるのが一般的です。

酢の物

酢漬け料理のことで、おせちにおいては箸休めとしての役割を持っています。紅白なますのように鮮やかな色彩の料理が多く、見た目にもおめでたい雰囲気です。

紅白なます:家内安全、魔除け、縁結び

おせちに入れられる紅白なますは、千切りにしたにんじんとだいこんを水引に見立てており、家内安全を願って食べられます。また、水引には魔除けの効果があり、縁結びという意味が込められています。

菊花かぶ;頭(かしら)を目指す、魔除け

かぶはその語感が頭(かぶ、かしら)に通じることから、頭(かしら)を目指すという縁起物です。 また、国花である菊には魔除けの効果があると古くから信じられており、菊の花を模して、かぶを飾り切りにした「菊花かぶ」には長寿を願う意味合いがあります。

チョロギ:不老長寿

江戸時代に日本に伝わったとされるチョロギは、漢字で「長老木」「長老喜」と書かれ、長寿を祈願する食材です。おせちでは、梅酢やシソ酢漬けにした赤い塊茎が食べられます。

【五の重】
福を詰める

五段重では、五の重は「福を詰める」場所としてあえて空箱にします。年神様からいただく福が入る場所ですので、おせち料理は4段以内におさまる量を用意しましょう。

重箱の段数を奇数にする意味

奇数は「吉数」と同じ読みをすることから、縁起のよさを意味する数字と言われています。段数だけでなく具材の数も奇数にすると縁起が良いとされていますので、おせち選びの参考にしてみてください。

関連記事:おせちの詰め方は5種類!重箱やお皿への盛り付け方法も解説

地域別の定番おせち料理とその意味

地域によっては、郷土料理がおせちの定番料理として取り入れられているケースもあります。今回は各地域でおせちの定番となっている郷土料理を7つ紹介します。

【青森県】いちご煮

ウニとアワビを使ったお吸い物です。もともとは漁師の浜料理として生まれたと言われていて、現在もお正月をはじめハレの日やお祝いの席で食べられています。「いちご」という名称は、お椀に沈むウニが朝霧の中の野いちごのように見えたことから名付けられたという説があります。

【栃木県】しもつかれ

塩鮭と擦りおろしただいこん、にんじんなどの根菜を酒粕で煮込んだヘルシーな料理です。鮭の頭は魔を払うと信じられているため、火の用心や家内安全を祈る縁起物として赤飯と一緒に食べられて来たそうです。しもつかれに入れる鮭は頭ではなく、生臭さを抑えやすい切り身が使われることもあります。

【新潟県】のっぺ

里芋やきのこを、ホタテの貝柱で出汁を取って薄味で煮込んだ、とろみのある煮物です。豪雪地帯が広がる新潟では、外出できなくても食べられるよう雪を冷蔵庫がわりにして保存されてきたと言われています。家庭料理として日常的に食べられてきましたが、現在はお正月の定番料理となっています。

【和歌山県】ぼうり

里芋の親芋を皮が付いたまま切らずに煮込み、お椀に載せていただく見た目のインパクトがある料理です。ぼうりが食される和歌山県田辺市では、鎌倉時代に山伏に扮した護良親王が訪れた際に餅を与えなかったという伝説があります。その非礼を詫びるため、正月に餅のかわりにぼうりを食すようになったと言われています。

【愛媛県】じゃこ天

小魚のすり身を、小麦粉や卵と混ぜて揚げた練り物です。小魚の皮や骨もすり潰して入れているため栄養満点で、お正月のような祝の席だけでなく、日常的におかずとして食べられています。愛媛県宇和島市ではじゃこ天専門店が点在していて、気軽に味わえます。

【熊本県】からしれんこん

茹でたれんこんの穴に、からしと味噌を混ぜあわせたものを詰めて、油でさっと揚げた料理です。熊本県ではおせちの定番料理として取り入れられているほか、地元のスーパーでも年間を通して販売されていて、おかずや酒のつまみとして日常的に食べられています。

【沖縄県】ターンムディンガク

沖縄県の特産である田芋をすり潰して甘く練りあげた、栗きんとんに似た料理です。田芋は親芋のまわりに小芋や孫芋がたくさん育つことから、子孫繁栄の象徴とされていて、お正月やお盆などのハレの日に食べられています。

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新定番!和洋中おせちの定番料理とその意味

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最近は割烹料亭だけでなく、フレンチや中華レストランが手掛けるおせちも人気です。そうした洋風おせちや中華おせちでの定番料理を紹介します。

【洋風おせちの定番】ローストビーフ

洋風おせちでは、日持ちがするローストビーフが定番です。伝統的なおせち料理と違って、縁起を担ぐ意味はありません。しかし、子どもにも人気で、手軽に楽しめるごちそうであるため幅広い層から好まれています。

【中華おせちの定番】エビチリ

中華おせちでは、縁起の良い海老を使ったエビチリが定番料理になっています。金箔を使って華やかな飾りつけがされていることもあり、お正月のおめでたい雰囲気を盛り上げます。

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【FAQ】おせちに関するよくある疑問にお答え

おせちの意味に関連するQ&Aをまとめました。

おせちに甘い味付けの料理が多い意味は?

砂糖を使うことで日持ちが良くなることと、昔は砂糖が貴重な品だったため新年を祝う正月に贅沢をすることが目的です。

おせちが高価なのはなぜ?

年神様にお供えする料理として高級な食材をたくさん使っていることと、調理工程に手間がかかる料理が多いことなどが理由です。

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まとめ

おせちには新年をより良く過ごせるよう、縁起の良い意味を持つ料理が詰められています。伝統的な定番具材や地域の郷土料理だけでなく、洋風・中華風おせちで人気のローストビーフやエビチリなども新たな定番として人気です。たくさんの選択肢の中から、自分や家族の好みにあったおせち料理を選んでみてください。
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