日本では人が亡くなると、親族は一定の期間、普段とは異なる生活を送る風習があります。この期間を喪中と言い、喪中にはお祝いごとは避けたほうが良いとされています。そんな喪中の期間にお正月を迎えた場合、おせち料理は食べても良いのでしょうか。今回は、喪中のおせちにおけるルールやしきたり、喪中期間中には避けた方が良い食材、お正月のおせちに代わる料理などについて解説していきます。
お正月になると、新年を迎えたことをお祝いするおせち料理を食べるのが日本の風習です。ただ、喪中にある家庭はおせち料理を食べるのは控えた方が良いとされています。では、実際のところはどうなのでしょうか。まずは、おせちと喪中の関係について見ていきましょう。
喪中とは、故人の死を偲んで身を慎む期間のことを指します。故人が亡くなったことを受け入れ、静かに悲しみと向き合う期間ということで、その間はお祝いごとを控えるべきとされています。喪中の期間は、親や配偶者など故人との関係によって差はありますが、3ヶ月~1年程度が目安です。
おせち料理の起源は諸説あるものの、弥生時代にまで遡るとされています。日本のおせち原点だと言われているのは、神様に収穫物の報告や感謝の意味を込めて、その土地で獲れた食材をお供えしていた儀式。おせちは漢字では「御節」と書き、もともとは季節の節目を表す節句に食べられる料理を意味していたとされています。江戸時代には5つある節句の中でお正月が最も重要であると位置付けられ、定番として広まっていったという説が濃厚です(※諸説あります)。
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お正月を祝い、縁起が良いと言われている食材が使われているおせち料理。一方で、喪中は祝いごとを慎み、故人を偲ぶ期間です。喪中にはお祝いごとは避けるべきという考えから、結論としてはおせちを食べないほうが良いとされています。
喪中と同様に、故人を偲ぶ期間として「忌中」があります。では、忌中とはどのような期間で、喪中とどのような違いがあるのでしょうか。
忌中は、仏教と神道の両方に通じるものですが、わずかに違いがあります。仏教においては、故人が亡くなってから49日目に行われる「四十九日法要」が終わるまでの期間のことです。一方で神道では、同じく50日目に行われる「五十日祭」までの期間を意味しています。忌中が終わることを「忌が明ける」と言い、喪中と同様に忌が明けるまではお祝いごとは控えるべきとされています。
喪中におせち料理を食べることは避けたほうが良いというのが基本的な考え方です。よって、命日から四十九日法要を迎える49日間の忌中も、おせちなど祝い事を避けたほうが良いでしょう。
おせちは喪中には控えたほうが良いとされていますが、喪中であっても忌明けならおせちを食べても構わないと言われることもあります。ただし、喪中に食べる場合には、おせちならではのお祝いの意味を持たせないことが大切です。そこでこちらでは、喪中におせちを食べる際のしきたりについて解説します。
おせち料理を入れる重箱には、「おめでたいことが重なるように」という意味が込められています。喪中は祝いごとを避ける期間なので、重箱はふさわしくありません。また、喪中は故人が亡くなったという不幸を悲しむ期間ということで、「悲しいことが重ならないようにする」という考えもあります。そのため、喪中におせち料理を用意する場合は、お皿に並べるなど重箱を使わないようにすることが大切です。
お正月のお酒は、おせちと一緒に楽しむもの。元日の朝に飲むお酒である「お屠蘇(とそ)」は、縁起が良い祝い酒と考えられていますが、その一方で「邪気を払う」という意味も含まれています。喪中では、お屠蘇は朝ではなく夜に飲むことで、おめでたい印象ではなく邪気払いのためという意味を強調することになります。
「金」や「金色」は、おめでたいことの象徴です。その意味から、デパートなどで販売されているおせち料理には、金箔がふりかけられている場合があります。喪中は故人を悼み、悲しみを表す期間。豪華でおめでたいイメージを持つ金箔は、喪中のおせちにはふさわしくありません。こうしたことから、喪中におせちを用意する場合には、金箔を使用しないほうが良いとされています。
おせち料理は、「お祝い」や「縁起の良さ」を表す食材にあふれています。喪中におせちを用意する場合は、縁起物の食材を使わないように注意を払うようにしましょう。なお、現在では喪中用のおせちとして、精進料理が主体でお祝いの食材を使っていない「ふせち料理」といった商品も販売されています。ふせち料理は、喪中にお正月を迎える方が安心して食べられる料理とされています。
喪中におせちを食べる場合は、縁起物の食材を避けて用意すると良いでしょう。どのような食材は避けた方が良いのか、いくつか例を挙げて紹介していきます。
紅白はおめでたいことを表す色の組み合わせで、お祝いの席でよく使われます。紅白の食材をおせちに入れてしまうとおめでたい印象になってしまうので、たとえばかまぼこであれば紅白かまぼこではなく白一色のかまぼこを用意。また、なますも紅白ではない色を選びます。このように、紅白の食材を避ける工夫が必要です。
鯛は、「めでたい」との語呂合わせから縁起の良さを連想させる食材で、おせち料理には定番の一品です。また、色も赤いので、お祝いごとにはよく登場する食材として知られています。そのため、悲しみを表す喪中期間にはふさわしくありません。
昆布巻きの「こぶ」は、語呂合わせから「喜ぶ(よろこぶ)」という言葉が思い浮かびます。また漢字では「子生婦」という字が当てられており、子孫繁栄の願いも込められています。こうした背景から、昆布そのものや昆布と組み合わせた食材も、喪中のおせちでは避けたほうが良いとされています。
長いひげや背中が曲がっている様子が、年老いた人のように見える伊勢海老。その特徴から伊勢海老は長寿の象徴とされており、「腰が曲がるまで長生きする」との願いが込められています。喪中は亡くなった故人を悼むための期間なので、長生きと関連する意味を持つ伊勢海老は控えましょう。
食材そのものはもちろんですが、おせち料理として用意する場合の切り方や結び方にも注意が必要です。結びこんにゃく(手綱こんにゃく)は、結び目があることから良縁やつながりに縁起が良いとされています。また、にんじんを梅花のように飾り切りした梅花にんじんも、おめでたい食材として知られています。
喪中におせちを食べないという選択をしても、お正月には普段とは違った料理を楽しみたい方も多いでしょう。お正月におすすめのおせちに代わる食材や料理について、見ていきましょう。
冬が旬の食材の代表格といえばカニです。ズワイガニや花咲ガニ、毛ガニなどの種類があり、食べ方も刺身や鍋、網焼きなどの様々な方法で楽しむことができます。
すき焼きも、お正月によく食べられている料理の一つです。鍋料理ということで、おせちのようにたくさんの人と一緒に食べることができるのが嬉しい点と言えるでしょう。おせちの代わりのすき焼きということで、普段よりも質も値段も高いお肉を選んで豪華なすき焼きを楽しむのもおすすめです。
焼肉もすき焼きと同じように、家族や親戚で集まって楽しむことができる料理です。お正月であれば、なかなか味わう機会のないブランド牛を取り寄せてみるのも良いかもしれません。
年末年始の食事は、和食が多くなるかもしれません。和食以外の食べ物が恋しくなったら、多くの人が好きなカレーを食べるという選択もあります。有名な店舗が監修したカレー、高級なお肉や海の幸を使ったカレーなど、質の高いレトルトカレーを取り寄せると自宅でも特別感を楽しめます。
お正月の食事の新しい選択肢として、「年明けうどん」を食べる地域もあります。重たい食事に胃が疲れたら、さっぱりしたうどんで一息つくのも良いかもしれません。稲庭うどんや讃岐うどんなど、産地別の違いも楽しむこともできます。
しゃぶしゃぶも鍋料理ということで、多くの人と一緒に食事をしたいときにピッタリです。お正月用であれば、様々なブランド牛やブランド豚の中から食べてみたいお肉を選んでみるのも楽しいかもしれません。
お正月は寒い時期なので、ラーメンもおせちの代わりの食事として適しています。外から帰ってきて冷えた身体も、熱々のラーメンを食べれば体はぽかぽかになるでしょう。ラーメンが好きであれば、通販で全国各地の有名ラーメン店から商品を取り寄せるのもおすすめです。
日本の食卓でもすっかりおなじみの中華料理。餃子や小籠包、焼売などの各種点心をテーブルに並べれば、お正月の期間でも飽きることなく食事を楽しめるでしょう。
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故人を偲ぶ喪中の期間は、おせち料理を食べるのは控えるのが基本的なしきたりです。ただ、それも絶対というわけではなく、おめでたい意味を持つ食材や縁起物の食材を避けるなど注意点を守れば、マナー違反にはならず、たとえ喪中でもおせちを食べることに支障はありません。喪中を迎えているのであれば、縁起物の食材が入っていないおせちを購入することも検討しましょう。
「郵便局のネットショップ」では、おせちの通販を行っています。おめでたい意味のこもった伝統的なおせち料理だけでなく、洋風おせちや中華風おせちなど、幅広いラインナップが揃っています。ランキング形式や予算、人数別から選べるため、ご自宅にいながら手軽に注文可能です。「来年のおせちはどうしよう?」と悩んでいる方はぜひ、参考にしてみてください。
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