
お歳暮(おせいぼ)は、年末にお世話になった人へ感謝の気持ちを伝える心温まる贈り物です。日本では古くからの風習としてお歳暮が根付いており、贈る時期や贈り方には決まりがあります。この記事では、お歳暮の意味や由来、お中元との違いについてわかりやすく解説します。
お歳暮とは、今年1年お世話になった人に対して「今年1年間ありがとうございました。また来年もよろしくお願いします。」という気持ちを込めて渡す贈り物のことです。
もともと 「歳暮」は「年の暮れ」を表す言葉で、俳句の世界では12月の季語にもなっています。毎年、年の暮れになると日頃からお世話になっている人に感謝の気持ちを伝えるための「歳暮回り」という行事が行われていました。その時に手土産を持参することが多かったことから、その贈り物のことが「お歳暮」と呼ばれるようになった歴史があります。
これまでは、会社の上司や仕事でお付き合いのある取引先、親戚などに贈ることが多い傾向がありましたが、近年では実家の家族や親しい友人・知人にもお歳暮を贈るケースが増えています。
贈る品物としては、縁起物とされる海産物やお肉・ハムなどがよく選ばれてきましたが、近年はさまざまな品物が選ばれるようになっています。
郵便局のネットショップでは、実際にお歳暮を購入した方にアンケートを実施し、どのような品物に人気があり選ばれているのかを調査しました。
初めてのお歳暮選びの方や、贈る相手に失礼のない品を選びたい方は、ぜひ参考になさってください。相手の好みやご事情に合わせて選ぶことも大切です。

結果は、和菓子・洋菓子(19.5%)が最も多く、続いてお肉・ハム(17.7%)、果物・野菜(16.1%)が選ばれていました。従来は海産物や加工肉が定番とされてきましたが、近年は菓子類の人気が高いことがうかがえます。
こうした上位の商品群は、お歳暮の時期になると、デパートやスーパーにも贈答用の特設コーナーが設けられ、毎年多くの人で賑わいます。この時期特有の盛り上がりは「歳暮商戦(せいぼしょうせん)」「お歳暮商戦(おせいぼしょうせん)」などと呼ばれています。
お歳暮を贈る時期は、東日本では11月下旬〜12月20日前後、西日本では12月13日〜20日前後と多少の違いがあります。お歳暮を贈るのに適切な時期は送り先の方が住んでいる地域により異なるので、事前によく確認しておくことが大切です。
意外なことに、お歳暮のルーツは中国に古くからある慣習にあります。中国の道教では、旧暦の1月15日は「上元」、旧暦の7月15日は「中元」、旧暦の10月15日は「下元」と呼ばれ、それぞれの日を神様の誕生日として人々がお供え物をする行事がありました。これらの行事が、日本ですでに存在していた「盆礼」という行事と結びつき、「お中元」が生まれました。
また、日本には、もともとお正月にご先祖様の霊をお迎えする「御霊祭」のためにお供え物をする風習がありました。そのお供え物として、よその家に嫁いだ人や分家の人たちが、本家や実家にお神酒のおつまみになるような塩鮭やするめ、数の子などを年末に手渡しで持っていくようになります。これが中国の行事と結びついて「お歳暮」のルーツになったと言われています。
その後、江戸時代に入ると武士が自分の所属する組合の組頭に准血縁の証として年末に贈り物をする習慣が根付きました。一方、商人の世界では掛け売りの商売が広く行われており、お盆や年末に半年分の精算をする習慣があったことから、精算をする時に得意先にお礼のための贈り物をするようになります。明治時代以降は、しだいに上司やお世話になった方にも贈り物をするようになり、現代のお歳暮の習慣が一気に広まったのです。
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お歳暮とよく似た風習に「お中元」があります。お中元は、もともと中国で旧暦の7月15日の「中元」に、仏教の年中行事である「盂蘭盆会(うらぼんえ)」が行われていたことが由来です。盂蘭盆会に関して、お釈迦様の弟子のひとり、目連尊者(もくれんそんじゃ)が地獄に落ちて苦しんでいる母を救うために、お釈迦様の教えに従って、旧暦の7月15日に百味を盆に盛って修行を終えた僧たちに供養したところ、母親を救うことができた、という言い伝えが残されています。
日本の「お盆」は、7世紀の初めにこの「盂蘭盆会」が中国から伝わり、606年に「斎会」と呼ばれる行事が行われたことがはじまりと言われています。以来、日本に仏教が広まるとともにお盆の行事も普及していく中で、「中元」と「お盆」が結びつき、お盆の時期に贈り物のやりとりがなされるようになりました。
お歳暮もお中元も、どちらもお世話になった方へ日頃の感謝の思いを伝えるために贈り物をするもので、特に目的に大きな違いはありません。贈り物をする時期が、お歳暮は年末であるのに対し、お中元は1年の真ん中頃であるといった違いがあるくらいです。お中元とお歳暮を両方贈る方もいらっしゃいますが、近年は年末にお歳暮のみを贈る方も増えています。
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北陸地方では、娘が結婚すると嫁の実家から娘の嫁ぎ先に、お歳暮として出世魚のブリを丸ごと1本贈る風習があります。この風習は「嫁ブリ」と呼ばれ、「出世魚のブリのように、旦那さんには出世してほしい」「娘がこれから暮らす家が末永く繁栄してほしい」「これから生まれてくる子供が健やかに成長してほしい」との願いが込められたものです。そのため、娘を嫁がせた家では、年末になると一匹数万円もするブリを値段も気にせず買い求める人が多いと言われています。伝統的には高価なブリを贈る習慣も見られますが、近年はご家庭の事情に合わせて贈るケースも増えています。また、婿の実家側では、贈られたブリをすぐさま半身にして嫁の実家に返し、双方とも親戚や近所の人々に配るのが習わしとなっています。
逆に、九州では婿の実家から嫁の実家にブリを贈る風習があります。これは、「良か嫁ぶり」という意味に掛けて行われているものであり、婿の家族から嫁の実家に対する「大切な娘さんをお嫁にいただきありがとうございました」という感謝の思いが込められています。かつては、婿の両親が息子とともに嫁の実家を訪ね、挨拶をしたとも伝えられています。
企業によっては、お歳暮のやりとりを継続しているケースもあります。
しかし、バブル崩壊後はコンプライアンス意識の高まりから高額な贈答品の受け取りを辞退する企業も現れ始めました。また、2000年代以降は個人情報保護や上司・部下の癒着防止、内部統制の観点から、社内外ともにお中元やお歳暮などのやりとりを全面的に規制する企業も出てきています。
近年では若者を中心にお歳暮やお中元を贈る人が減っていると言います。お歳暮の習慣や歴史を知ることで、贈り物の意味や選び方を改めて考えるきっかけになるかもしれません。
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お歳暮を贈る時期は、地域によって目安が異なります。
近年は、準備期間を考慮して早めに贈る傾向があります。遅くとも12月20日頃までにはお届けできるよう手配するのが一般的です。この時期を過ぎてしまう場合は、年明けに「お年賀」や「寒中御見舞」として贈るとよいでしょう。
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お歳暮もお中元も、「日頃お世話になっている方へ感謝の気持ちを伝える贈り物」という目的に大きな違いはありません。最も大きな違いは贈る時期です。
どちらも日頃の感謝を伝える大切な機会ですが、近年は一年の終わりに贈るお歳暮の方が重視される傾向にあります。
伝統的には、仕事の上司や取引先、仲人、親戚など、目上の方や特にお世話になった方に贈るのが主流でした。しかし、近年は贈答のあり方も多様化しています。現在は、実家のご家族や親しいご友人・知人など、より身近な方々へ「今年1年の感謝」と、「来年への挨拶」を込めて贈るケースが増えています。感謝の気持ちを伝えたい相手に贈るのが良いでしょう。
※コラムの内容については、地域性や諸説ございます。
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