作り手こだわりレポート!

Vol.2 「五島軒」様

本店レストランの製法をそのままに
自社工場で作り上げるレトルトカレー

地域色豊かなカレーは次々出てくるけれど、気になるのはそのお味。
そこで、作り手の工夫や味わいの秘訣など、スタッフが直接現地を訪ねてレポートします!
今回は、1879 年(明治12 年)創業の「五島軒」さまにお伺いしました。

営業本部法人営業部の野さん
株式会社五島軒 若山社長(左)と
南かやべ漁協大船支所 高谷理事(右)

函館の歴史とともに歩む

五島軒の初代料理長は長崎の五島列島出身の侍・五島英吉で、土方歳三らとともに旧幕府軍として戊辰戦争を戦いました。旧幕府軍は敗戦しますが、命からがら逃げ込んだロシア領事館でパンや料理作りを手伝ったことが、五島軒初代の若山惣太郎とともに「ロシア料理とパンの店・五島軒」を創業するきっかけとなりました。その後、日本人の主食である米と西洋料理を掛け合わせた「洋食」を学ぶため、二代目の若山徳次郎が東京のホテルで料理修行を行い、カレーやオムライスなどのレシピを持ち帰ります。このことが、現代まで続く五島軒の洋食文化の基礎となっており、近年ではレストランの味をより多くの方に楽しんでもらうため、調理場での製法を取り入れた独自のレトルト工場を建設し、全国のお客さまにお届けしています。

レストランの味をご家庭へお届けするために

レトルト加工における難しさは、殺菌工程での加圧・加熱を通した後に生じる味の変化にあります。レストランと同じレシピを用いても味が変わってしまうため、圧力釜を通した後の味をレストランの味にするための微調整が最も難しい点であり、こだわっている点でもあります。
特に、本カタログ掲載の「函館港町カレー」の具材はエビ・イカ等魚介類であるため、素材が持つ「臭み」が課題でしたが、ソースを作る工程で「白ワイン」を加えることで解決しています。また、白ワインを加えるタイミングには試行錯誤を重ね、具材の旨みだけを残し柔らかい食感を実現しました。

函館の未来へつなげるために

古くから本州との交易で、高い評価を得てきた「函館真昆布」出典:函館市ホームページ

五島軒の代表的な商品の1 つである「函館カレー」。北海道内で長年愛され、お客さまから支持されている商品ですが、今回新たな素材を加え、1993年の発売以降初めてリニューアルを行いました。その新たな素材とは、地元函館産の「真昆布」。
きっかけは函館市内の「遺愛女子高等学校」のSDGsの授業に同社が参画した際、生徒から「函館の昆布を守りたい」という声が上がったことにありました。現在、函館の昆布漁は厳しい状況に直面しています。地球温暖化によって水温が上昇し活発化したウニなどによる若い芽の食害により、収穫量が年々減少しており、漁業の担い手も増加は厳しい状況です。
このような背景から昆布だし入りのカレーを試作したところ、生徒の大半から支持される結果となり、函館カレーへの昆布だし採用を決定しました。また、函館の昆布生産者からは、「生活に近い商品に自分たちの昆布が使われることが嬉しい、昆布にかかわる人が増えるとありがたい」という声もあります。同社はこれをきっかけに地元の一次産業と製造業が団結し、函館の未来へつながることを願っています。

取材を終えて

今回は五島軒さまのレトルトカレーを製造している工場にお伺いしました。味のベースとなるブイヨンは早朝から時間をかけて煮込み、カレールーと合わせる工程には随所に職人のこだわりが入っており、レストランの味をそのままレトルトカレーでご家庭にお届けするという五島軒さまのコンセプトが感じられました。さらに、若山社長からは自社の商品だけでなく、産業の面から地元・函館を守り育てていくという熱い意気込みをお伺いすることができました。
また、「函館港町カレー」に合う付け合わせも教えていただきました。「函館港町カレー」はトマトの酸味が利いているため、「鶏肉のうま煮」や「チキンカツ」など、さっぱりとした鶏肉料理、同じように酸味の利いた「らっきょう」や「福神漬け」、「ピクルス」などを添えると見た目もより華やかになるとのことです。みなさまぜひお試しください!


株式会社 五島軒
〒040-0053 北海道函館市末広町4-5
明治12 年の創業から変わらぬ味を今に伝える北海道函館の老舗レストラン。

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